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日本市場における製薬業界のデジタル化と未来 2025年の崖を克服するには

今年は、経済産業省が「2025年の崖」としてレガシーシステムからの脱却に関する警鐘を鳴らしてきた転機の年です。製薬各社においては、IT基盤のサイロ化や、業務アプリケーションの属人化・ブラックボックス化といった課題があり、更なるデジタル最適化が急務となっています。特に、AI や DX の活用には、データの質を向上・維持するための基盤やプロセスの整備が不可欠であり、データの一元化と効果的な活用がビジネスの成功の鍵を握ります。

全社共通のデータ・デジタル基盤を構築し、営業、マーケティング、メディカルといった部門間コラボレーションを高めていく必要があります。それにより、顧客中心のリアルタイムでシームレスなコマーシャル活動の推進が可能となります。

日本の製薬企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。度重なる薬価改定や、新薬モダリティの複雑化、MR 数の減少に加え、働き方改革の影響から、MR と医師との面会機会も減っています。そんな中、医療関係者に情報を効率的に届けるためにどうすればいいのでしょうか。シェアオブボイスのみに焦点を置く時代はすでに終わりました。デジタルを最大限に活用して、顧客に対する一回ごとのディテーリングの質やインパクトをいかに向上させられるかが MR による情報伝達の成否の鍵となるのは明らかです。

医師らとの接点は、MR、メール、オウンドサイト、コールセンターなど様々です。各タッチポイントにおけるインタラクションをすべてデジタル化し、得られたインサイトも含めて集約することが DX の第一関門になります。データの蓄積は AI 活用の土壌となり、更なるインサイト創出に役立ちます。こうした取り組みは、医師個人の薬剤の理解度や考え方等を踏まえたアプローチや、顧客中心の質の高いディテーリングに必ずつながります。

今後、製薬企業はデジタル化を単なる手段ではなく、戦略の核として再定義し、データ活用の目的を明確化する必要があります。既存の投資先との配分見直しも含め、選択と集中をする時期にきています。最終的な目標は、患者さんに最適な医療を提供することであり、そのためには、全社的な連携とデジタル基盤の強化が必須です。