アストラゼネカ株式会社は、どのようにVeeva CRMのマイプレゼンテーションとサブプレゼンテーションを活用して、MRの活動を支援してきたのでしょうか。その匠の技をお聞きしました。
マイプレゼンテーションを効果的に活用したMR活動を実践
アストラゼネカ株式会社では、2014年にVeeva CRMを導入し、2015年の製薬協の作成要領に準拠するよう資材を作成して、マイプレゼンテーションを活用したMR活動を推進してきました。当時はMRとして活躍され、現在はComEx CRMチーム部門に移動した渡邉利真氏が、当時から便利だと感じていたマイプレゼンテーションの機能を次のように振り返ります。
「当社では、Veeva CRMのマイプレゼンテーション機能をマイストーリーと呼んでMRが効果的に活用するようにプロモーションしてきました。マイプレゼンテーション機能は、説明する相手のニーズに合わせて承認されたスライドを組み替えて編集できるので便利だと思います」
一般的に、マーケティング部が作成した標準資料は、誰にでも情報をくまなく提供する目的なので、内容は十分に網羅されていて使いやすいのですが、その反面、個々のディテールの目的に合わせたり、対応する医師の関心に合わせたり、内容に厚みをもたせることができません。コンプライアンスを遵守しながら、効果的なディテールを行うためには、MRの顧客に合わせた柔軟なストーリーの組み立てをサポートする機能が求められています。
渡邉氏は「自分がMRとして活動していた当時は、想定質問に対する回答(オブジェクションハンドリング)スライドをマイプレゼンテーション機能で追加して、便利に活用していました。MR時代には、マイプレゼンテーションをフル活用して効果的な説明会を行ってきました」と話します。マイプレゼンテーションを積極的に活用してきた渡邉氏は、他にも便利な使い方を紹介します。「貴重な説明会の中で、1製品だけを説明して終わることは少ないので、複数の薬剤を組み合わせたセットを作ることもありました」マイプレゼンテーションで、複数製品のスライドを統合できるようになったのは、日本のお客様からのリクエストによりエンハンスされた機能です。アストラゼネカ株式会社では、エンハンスされた標準機能を活用して、効率よく効果的なMR活動を実践してきました。
4部門の連携によるサブプレゼンテーション活用で作成要領に対応しプロジェクトに成功
医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領(略称:作成要領)が2019年4月に改定され、プレゼンテーション用コンテンツに有効性と安全性のバランスが求められるようになり、アストラゼネカ株式会社でもマイプレゼンテーションの利活用を見直すことになりました。その経緯について、北垣瑞穂氏は次のように説明します。「MRによるマイストーリーの組み立ては、どうしても有効性と安全性のバランスの担保に課題がありました。そこで、関係部門とも議論して、ガイドラインへの適応に向けた改善が必要だという結果になりました。改善策を探っていくうちに、マイプレゼンテーションのサブプレゼンテーションに注目しました」
サブプレゼンテーションは、元となる親スライドを選択した場合に、関連付けられている必須スライドも表示スライドに含める機能です。サブプレゼンテーションの設定は、Vault上で行うのでマイプレゼンテーションを利用するMRが、任意に必須スライドを取り除くことはできません。この仕組みを活用することで、有効性のスライドを選んだときに、自動的に臨床試験デザインと安全性のスライドを表示できるようになります。北垣氏は具体的な取り組みの経緯を振り返ります。
「新ガイドラインが発表されたときに、マイプレゼンテーションを使ったMRによるスライドの自由な組み替えは、改善すべきではないかという危機感がありました。そこで、コマーシャルエクセレンスチームとしてIT部門も巻き込んでサブプレゼンテーションの利用を検討していたのです。そこに、実際の改定が行われることになり、プロジェクトチームが立ち上がりました。具体的には、資材レビュー部門とマーケティング部門が密にコミュニケーションをとって、サブプレゼンテーションを活用する資材の改修と運用フローの作成に取り組みました」
実際のプロジェクトについて渡邉氏は「まずは、既存のスライドの棚卸しから開始しました。その過程で利用頻度が低いもの、マーケティング情報提供活動方針と関連の低いスライドなどは削除して、サブプレゼンテーションに必須のものを残しました。そして、有効性には臨床試験デザインと安全性が必須になるように設定し、ガイドブックを内製して、マーケティングチームや製作会社向けなど、全部で6回の大きな説明会を実施しました」と説明します。
こうした努力が成果を結び、アストラゼネカ株式会社のMRによるマイプレゼンテーション活用では、有効性と安全性のバランスが取れた構成が遵守されるようになりました。MRからは安心して資料を使え、手間が省けると好評です。マーケティング部門としては、導入には手間がかかったものの資料のマッチングのパターンを見つけてからは、思いのほか作業が捗ったそうです。
取り組みの成果と今後について北垣氏は「患者さんに適切な治療をお届けするための情報提供活動の適正化を行うことでMRをサポートする 、というモチベーションが、各部門の連携による成果につながったと思います。コロナ禍ということもあり、さらにルールが厳しくなる昨今で、MRがルールを守りながら安心して自信をもってディテールできる環境を提供していきます。今後は、CLMで収集したデータの分析なども実践していきたいと考えています。将来的には、診療科をはじめとした顧客ごとの効果的な情報提供パターンのような傾向をつかめたらと思っています」と話します。
※本事例は2021年2月に行われたインタビューを基に作成されたものです。