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2025年のR&D Quality領域の予測:「卓越したプロセス」が障壁を取り除き、チーム間の連携を加速させる

接続されたシステムと統一されたデータにより、R&D と Quality のチームが一体となって、より早く、安全で、効率的な医薬品開発を進めることができます。2025 年、バイオ製薬会社は、患者や施設のための臨床試験の改善から 品質保証(QA)と品質管理(QC)との統合まで、レガシーボトルネックを克服するための卓越したプロセスに焦点を当てるでしょう。ここでは、Veeva のR&D と Quality の専門家による 2025 年の予測を紹介します。


Jim Reilly

— Jim Reilly, Vice President, R&D Strategy

全て連携されたプロセスにより、研究開発(R&D)部門全体のコンテンツとデータの流れが加速

今日、EDC の有害事象を安全性データベースに入力するようなシンプルで重要なタスクは、ある企業では自動化されたワークフローで作業していますが、多くの企業では異なるシステム間で何時間も手作業が必要なこともあります。このような自動化されていないプロセスは作業の遅延に繋がり、その結果、患者がその負担を負うことになる可能性があります。2025 年、バイオ製薬企業は、研究開発全体のコンテンツとデータの流れを改善するために、卓越したプロセスに焦点を当てるでしょう。

今、製薬企業は、個々の業務アプリケーションを選定し、それらを連携することに限界を見ており、業界は標準化と簡素化に向かっています。これは、研究開発全体のプロセス標準への投資によって推進されます。企業によっては、臨床、薬事、安全性、品質にまたがるコンテンツやデータの流れを改善するために、ワークフローの自動化に重点を置くかもしれません。また、組織の構造を見直し、プロセス・エクセレンスの専門チームを作る企業も出てくるでしょう。


Drew Garty

— Drew Garty, Chief Technology Officer, Clinical Data

より多くの人が治験に参加するための選択肢が増える

治験の患者登録とその維持は、試験の複雑さと患者の疲労が原因で高い脱落率につながっており、施設と依頼者にとって引き続き、課題となっています。2025 年には、患者により多くのオンボーディングや訪問日の選択肢を提供する依頼者が、患者の体験を改善し、これまで十分にサービスが行き届いていなかった集団が治験に参加しやすくなるでしょう。

多様性行動計画に関する米国 FDA の新しいガイダンス草案は、依頼者に対し、より多様な患者を登録し、試験におけるこれらのグループの統計的内訳を示すよう促しています。これは、各人口動態的サブグループの統計学的エンドポイントを満たすために十分なクリーンデータが利用可能であることを保証するために、申請のためのデータ処理と分析方法に影響を与えるでしょう。

患者の選択肢が増えるということは、データの入力が増え、複雑になるということです。サブグループの登録と維持のモニタリングからデータ管理、統計分析まで、中央で統一されたデータが、多くの患者の治験参加を可能にします。


Bree Burks

— Bree Burks, Vice President, Site Strategy

依頼者は、医療機関のキャパシティ問題の解決に乗り出す

治験に取り組む医療機関は、医薬品開発の根幹です。しかし、世界的な治験の増加に伴い、スタッフの離職率により施設の労働力は現象しています。複雑なプロトコルアメンドメントや、試験ごとに異なるテクノロジーにより、施設のスタッフはより多くの試験を担当することが難しくなっています。

2025 年に製薬会社が医療機関とのエンゲージメント戦略を再考する際、製薬会社は一貫したテクノロジーと標準化を優先するでしょう。55 %の医療機関は異なるテクノロジーへの対応が最大の課題であると回答しており、製薬会社は標準化を推進するでしょう。

医療機関が標準化により管理業務に費やす時間が少なくなるほど、治験を実施し、患者を支援するための時間が増えます。この変化により、医療機関ではより効率的に治験を実施することができるようになります。


Marc Gabriel

— Marc Gabriel, Vice President, Vault RIM

新薬をグローバルレベルの計画に基づき申請することにより、承認が数年短縮される

かつてはマーケットが大きい国から順次申請していましたが、現在では、医薬品をより早く全世界の患者に届けるにあたり、その申請の進め方が障壁になることがあります。

規制業務において、以前は、トラックいっぱいの申請書類が当局に輸送されていました。デジタル化が進んでも、その量と複雑さは変わりません。薬事チームは依然として、始めに中核となるマーケットで承認申請を行います。その後、時間をかけて他のマーケットに展開するというアプローチをとっています。この進め方では、マーケットの小さい国の患者は、より長い時間、新薬の登場を待つことになります。

各国の申請状況を一目で確認することができるアクティブ・ドシエのような新しい機能により、薬事チームは先行した申請をより早く、容易に他のマーケットの承認申請に活用できるようになります。かつて 5 年以上かかっていた申請プロセスは、一層短縮されるでしょう。

これらの段階的な変化は、薬事チームと患者の双方にとって、大きな効果をもたらすことになります。


Ashley McMillan

— Ashley McMillan, Senior Director, Vault LIMS Strategy

QA と QC の統合が、品質向上の鍵となる

品質保証(QA)と品質管理(QC)のビジネス・プロセスはつながっていますが、それらを支えるシステムは連携されていません。この課題を解決するため、 一部の大手企業はインテグレーションを用いてQA、QC、パートナーの情報を連携させています。2025 年には、このデジタル品質への投資によって治験の時間が短縮され、市場投入までの時間が短縮されることも期待できます。

品質チームは、データとアプリケーションを統合し、レポーティングとアナリティクスを大幅に進化させます。これにより、リスクを積極的に管理し、ボトルネックを早期に特定して対処するための指標が提供されます。例えば、出荷判定時点で QA と QC のデータを利用し、より迅速に出荷判定をすることができます。共通のデータソースから作業することで、パートナー企業とのコラボレーションが標準化され、手作業やデータエラーのリスクが削減できます。

QA と QC を一体化させることで、製薬企業は、今後、数年間でインパクトのある AI のユースケースの基盤を確立するでしょう。


Stephan Ohnmacht

— Stephan Ohnmacht, Vice President, R&D Business Consulting

CRO におけるデータの透明性が治験の成功を高める

2025 年、製薬企業は持続的に透明性のあるデータの提供を CRO(医薬品開発業務受託機関)に求めています。これにより、製薬会社は迅速に考察を得ることができるようになります。製薬会社がエンドツーエンドのデータを CRO と共有することにより、アウトソーシングのあり方に顕著な変化が生まれるでしょう。

製薬会社と CRO がより頻繁にデータを共有することになります。例えば、プロトコルデザインへの情報提供、施設の追加、潜在的な希少疾患を持つ治験参加者の特定、エンドポイントの変更などです。ライブデータへのアクセスが新たなベースラインとなることで、治験の変更により迅速に対応できるようになるでしょう。これにより、治験の成功確率が高まり、患者に新薬を届けるまでの時間を短縮できる可能性があります。

バイオ製薬企業は、フルアウトソーシングにおいてもオーバーサイトの恩恵を受け、より迅速に意思決定を行うことができるようになります。データの透明性はより大きな信頼を生み、CRO と効率的に協働できるようになります。


John Lawrie

— John Lawrie, Vice President, Vault Safety

包括的で信頼性の高い Safety データは、高度な自動化を促進する

Safety チームは、増大する安全性情報を少ないリソースでどのように正確にプロセスするかという課題に取り組んでいます。AI を活用することにより、少ないリソースで多くのことができますが、AI のみでは一貫性のない、分断されたデータとなるリスクがあります。

AI を有効に活用するためには、Safety チームは標準化された一気通貫型のファーマコビジランス(PV)プロセスを用いてデータ基盤を強化していくことが求められています。部門間のワークフローによって、手動によるデータ転送をなくし、データの明確なトレーサビリティが可能になります。システム全体の簡素化・標準化により、製薬企業は自動化と AI イノベーションのための基盤を築くことが必要になります。

この一気通貫型のデータフローは、部門間のコラボレーションの向上にもつながります。例えば、Safty のSAE(重篤な有害事象)を EDC システムから当局に報告するような作業が、より正確なデータを使って自動化できます。


Seth Goldenberg

— Seth Goldenberg, Vice President, Vault MedTech

「継続的に学習する AI/ML 医療機器」が新たなマイルストーンに達する

2024 年 10 月現在、米国 FDA は 950 以上の AI(人工知能)/ML(機械学習)を用いて開発された医療機器を承認しています。しかし、これらの医療機器は、「受動的な」ML を使用する「Software-as-a-medical device」(SaMD)です。「受動的」とは、AI/ML を用いた開発(データセットが処理され、傾向を特定するために訓練)の後は、製品はロックされ、新たなデータを使って学習することはなく、ML は使われないことを意味します。

2025 年には、継続的に学習する ML を使った史上初の医療機器の新製品申請が行われるでしょう。この医療機器は、SaMD をさらに進化させ、患者のニーズに迅速かつ効果的に対応します。単に ML を使って開発されるのではなく、患者データを学習するにつれて、その医療機器は変化します。市販後の製品アップデートに関する FDA の最終ガイダンスによれば、AI/ML を使用した医療機器は、事前の変更管理計画に基づいて患者データを継続的に学習して製品をアップデートすることが可能となり、最小限の医師の介入の元で、患者のニーズに能動的に対応できるようになるでしょう。

このような継続的な学習をする医療機器は放射線科(Radiology)や神経調整(Neuromodulation)のような臨床データが十分ある疾患領域に製品を提供する医療機器メーカーから申請が出される可能性が高いでしょう。例としては、神経刺激インプラントや、持続血糖測定器とインスリンポンプの組み合わせのような製品で、最小限の医師の介入で、患者のニーズに合わせて、自動的に投与量が調整されるような製品が考えられます。