Q&A:ライフサイエンス業界におけるイベント戦略の最新動向と考察
95%の医師が、製薬企業が後援する啓蒙イベントが有用な情報を提供していると考えています1。VeevaのCommercial Strategy担当Nick Baxterが、こうした傾向が起きている理由と、ライフサイエンス企業が顧客である医療従事者に対してイベントでどのように価値を提供できるのかについて解説します。
ライフサイエンス業界のイベント分野における現在の動向とその影響をどのように考えますか?
治療法はますます特化される傾向にあり、透明性に関する規制の厳格化によって、医師には処方する治療薬についての知識を増やすことが求められています。医師は最適な情報にアクセスし、こうした知識を当該分野の最も信頼できるリーダーに求める必要があります。また医師は論文・学術誌などの手段よりも、イベントから情報を得ることを好んでいます2。
医師が医療情報をもっぱらイベントにのみ頼っているというケースもあるため、製薬企業にとっては、顧客にリーチするのが難しい状況となっています。このような医療従事者との接触が減ったり、まったく無くなったりしているとなると、イベントは営業担当者と顧客との唯一の接点になっていると言えるのかもしれません。
またイベント分野ではバーチャル化も進んでいます。今日の医師の多くはデジタルネイティブであり、Eメールによる招待からオンラインコンテンツまで、イベント体験においてテクノロジーが大きな役割を果たすことを期待しています。医療従事者はイベントのロジスティクスや事後のコンテンツにおいてデジタル形式を好むことが多く、全体の40%が、オンラインミーティングによる知識と情報の共有が、対面でのイベントと同程度の水準に達しているとさえ考えています3。
一部の企業ではイベントを完全にバーチャル化して実施しています。そうすることで移動費用や場所代が不要になり、医師は勤務先の病院や自宅など、快適な場所からイベントに出席できるようになります。
医療従事者との接点が減少傾向にある中、ライフサイエンス企業はイベントをどう活用すれば、この傾向に先んじて対応し、主要な顧客とのエンゲージメントを確保できるようになるでしょうか?
イベントとは、メールや対面でのミーティングと同じく、医師にリーチするための1つのチャネルであるとライフサイエンス企業は考えるべきでしょう。イベントは自社内で完結するのではなく、企業の全体的な顧客エンゲージメント戦略の一環としてあるべきです。医師の20%近くが担当者と1対1で会うミーティングを望んでいないか、あるいはそれを制限されている状況下においては、イベントは医師と顔を合わせる貴重なチャンスです4。
顧客エンゲージメント戦略にイベントを総合的に統合する際には、CRMとイベント管理ソリューションのための中核を成す基盤が求められます。そのような基盤を確保することで、チームは医療従事者のあらゆる活動(メール、対面でのミーティング、イベント)を単一のシステムで追跡できるようになります。
顧客データが一箇所にまとまっていることにより、担当者は医師がどのような方法でいつリーチされることを望んでいるのかをより深く理解することができ、最終的により有意義な顧客体験を提供できるようになります。この単一ソリューションはライフサイエンス企業にとって様々なメリットがあり、例えば、世界中のチームが同じ情報を見られるようになることで、顧客へのアウトリーチにおける連携を高められるようになります。
ライフサイエンス企業が自社のイベントを医療従事者にとって価値あるものとするためには、どうすればよいでしょうか?
イベントの成功度について考えるときも、企業はやはりデジタルを念頭に置いた方が良いでしょう。医療従事者の87%がイベントのコンテンツにオンラインでアクセスしたいと考えており、76%は携帯アプリによる投票など、よりインタラクティブなコンテンツがセッションの最中に用意されていることを望んでいます5。デジタルコンテンツはエンゲージメントにとってのメリットだけでなく、アクセスしやすく、社内での共有が容易であるというメリットもあります。
また多くの医療従事者が、イベントにはより上質な情報が必要だと考えています6。そして製薬企業も、それを認識しているかもしれませんが、「良質のコンテンツ」とはどのようなものなのかを計測・定義するのに、しばしば苦労しています。重要なのは、どのメッセージに反響があったのかを把握しておくことです。イベント管理とCRM用の単一システムは、チームが医療従事者との1対1のミーティングやメールでどの資材を使用したのかを確認する際に役立ちます。さらに担当者は、このデータを利用してイベント戦略やテーマの選択、コンテンツの開発を促進することができます。
ターゲティングを押し進めたイベントとコンテンツを作ることで、出席者とテーマやスピーカーとを合致させやすくなります。顧客は、このような企業を信頼できる医療情報の提供源と見なして、その企業のイベントに優先的に出席するようになります。
場合によっては、イベントが医療従事者にリーチする最良の方法ではないというケースもあります。ある顧客はメールや電話といった単純な方法を好むと、担当者が推定することもあるかもしれません。しかしこのような洞察は、企業の顧客情報とイベントのデータが一つのシステム内に存在しているからこそ可能なのです。
イベント実施の際、ライフサイエンス企業は他にどのような課題に直面するでしょうか?
イベントのコンプライアンスを維持することが、最も重要な課題です。業界の規制を遵守していない企業は、多額の制裁金を課されたり、企業の法令順守に関する協定(CIA)の締結を迫られたりする可能性があります。このような協定は、企業に標準的な業務手順(SOP)を徹底的に見直し、イベントの詳細な報告を継続的に行うよう求めるものであり、時間、リソース、そして費用の負担増加につながります。
コンプライアンス違反について非常に大きなリスク分野となっているのが、「価値の移転の報告」です。サンシャイン条項に含まれている「価値の移転の報告」は、ライフサイエンス企業に対して、顧客に対するあらゆるやり取りや費用を詳細に報告するよう求めるものです。イベントの最後に出す食事やコーヒーにかかる少額の経費もその対象となります。この問題のさらに複雑な点は、多くの州、郡、そして都市において独自の支出上限額が決められているため、チームはただでさえ複雑な予算管理に加え、地域特有のルールへの配慮まで強いられることです。
こういった厳しいペナルティーと厳格なルールがあるため、ライフサイエンス業界はイベント管理用の新しいテクノロジーを採用することに、二の足を踏んできました。多くのチームが、何十年も前からのやり方に慣れきってしまいました。最新のプロセスに変更することで間違いが起こり、大きな損失につながるのではないかと恐れてきたのです。
しかし事実はまったく逆です。今日のテクノロジーは、企業が違反を犯さないように守ってくれる大事な保護機能を提供しているのです。ライフサイエンス業界に特化したクラウドアプリケーションは、最新の要件に対応しており、チームが地域の法令を遵守できるよう進化しています。また統合化されたグローバルシステムにアクセスすることで、本社はたとえそれが地域のごく小さなミーティングであっても、そのイベント予算の承認と最終報告のレビューを即座に実行することができるようになります。ある大規模の製薬企業では、イベント管理の集中化により、承認プロセスが2か月から2週間に短縮しました。さらに、統合されたイベント管理とCRMソリューションにより、顧客とのタッチポイントがすべて一箇所に保存されているため、担当者は「価値の移転の報告」が正確であると確信を持てるようになります。
イベント戦略の見直しを検討している企業に対し、どのようなアドバイスが考えられるでしょうか?
これからのライフサイエンス企業には、従来型のイベントモデルの範疇を超えた考え方が求められます。
非常に大きな成功を収めている戦略は、対面型のイベント、バーチャルイベント、そしてハイブリッド型のイベント(オンライン要素のあるライブイベント)が組み合わされています。事実、医療従事者の78%は企業に会場でのイベントとオンラインイベントの両方を提供してほしいと考えています7。担当者と医師は直に接するミーティングによる対面での直接的なやり取りを評価している一方で、バーチャルイベントの方が利便性や費用対効果が高いとも感じています。複数のイベント形式が提供されていれば、医療従事者はその中からスケジュール上の都合や好みに最も合ったものを選ぶことができます。つまりライフサイエンス企業にとっては登録者数が増え、顧客満足度も向上できるということになるのです。
また企業は、人工知能(AI)などの最新テクノロジーも活用した方が良いでしょう。一部の製薬企業とバイオテクノロジー企業では創薬や医薬品開発にAIを用いていますが、AIはコマーシャル領域にも影響を及ぼすものなのです。すでにAIと予測分析は、担当者がイベントをはじめとする、顧客の好みのチャネルで彼らにリーチしようとする際に、その方法を迅速に決定できるよう支援しています。さらにAI技術はコンテンツのパフォーマンスに関する新たなインサイトを提供し、チームがコンテンツのエンゲージ力や有用性を高められるよう支援することもできます。
トップクラスの製薬企業がどのようにイベント管理を改善しているか、知りたい方ぜひこちらの顧客事例をご覧ください。ある企業がチームの生産性の向上とメディカルイベントの影響力の増大を目指し、グローバルに開催されるイベントの管理をどのように統合したかが紹介されています。
1 http://phrma-docs.phrma.org/sites/default/files/pdf/krcsurveyofphysicians_1.pdf
2 http://start.ashfieldmeetings.com/acton/attachment/36531/f-0017/1/-/-/-/-/GB_Final_Science%20of%20Healthcare%20Professional%20Meetings%20white%20paper.pdf?sid=TV2:nu4VesPdI
3 http://start.ashfieldmeetings.com/acton/attachment/36531/f-0017/1/-/-/-/-/GB_Final_Science%20of%20Healthcare%20Professional%20Meetings%20white%20paper.pdf?sid=TV2:nu4VesPdI
4 https://www.mmm-online.com/home/channel/data-analytics/is-pharmas-access-to-physicians-decreasing-or-increasing/
5 http://start.ashfieldmeetings.com/acton/attachment/36531/f-0017/1/-/-/-/-/GB_Final_Science%20of%20Healthcare%20Professional%20Meetings%20white%20paper.pdf?sid=TV2:nu4VesPdI
6 http://start.ashfieldmeetings.com/acton/attachment/36531/f-0017/1/-/-/-/-/GB_Final_Science%20of%20Healthcare%20Professional%20Meetings%20white%20paper.pdf?sid=TV2:nu4VesPdI
7 http://start.ashfieldmeetings.com/acton/attachment/36531/f-0017/1/-/-/-/-/GB_Final_Science%20of%20Healthcare%20Professional%20Meetings%20white%20paper.pdf?sid=TV2:nu4VesPdI