Veeva Japan Blog

2020 Veeva Japan Clinical Summit Online

今年で6回目となるR&D向けのVeeva Summitがオンラインで開催された。今回は、Clinical Summit として主にクリニカルオペレーションクリニカルデータマネジメントにフォーカスし、2日間にわたって”ONE”をテーマにオンラインでの講演が配信された。初日のオープニング挨拶に登場したVeeva Japan株式会社 代表の岡村は「コロナ禍におる医療品開発を”ONE”チームで支え合い、さらなるお客様の成功を支援する新製品やお客様の事例をご紹介します」と開催の主旨を語った。

患者中心のペーパーレスによる臨床試験を実現するための戦略

Day1のオープニングは、Veeva Systems Inc.のHenry Levyによる”Veeva Strategy for Sites and Patients- Driving Paperless, Patient-Centric Trials”と題する基調講演。Henryは、新たに開発された治験実施医療機関と患者向けのソリューションを紹介し、患者中心のペーパーレスによる臨床試験を実現する戦略を語った。Henryは、今後5年間の展望と、医療機関や患者にフォーカスした取り組みと関連するアプリケーションを紹介し、MyVeeva、Veeva SiteVault、Veeva Clinical Networkの詳細を説明した。

Henryは「過去10年の取り組みでVeevaのVault Platformが、クリニカルデータマネジメントやクリニカルオペレーションに品質管理や申請・規制そして医薬品の安全性情報管理をカバーするコアアプリケーションを提供してきました」と説明する。

そして、2025年に向けてVeevaがフォーカスしている3つの領域を紹介する。それは、これまでの取り組み通り4ヶ月ごとのVersion Upを継続すること、まだ開発されていない新しいコアアプリケーションを提供すること、そしてクリニカルに重点的に取り組むこと、という3つになる。

Henryは「COVID-19の流行で臨床試験をペーパーレス化し患者中心へと移行することが、きわめて重要なニーズである」と指摘し「我々がこの領域に重点的に取り組むことで、患者が容易に試験へ参加できるようになり、紙の使用を削減または不要にできる」と説明する。Veevaの掲げる2025年までのイノベーションのゴールは、スケーラブルな真のペーパーレス化の推進と、患者中心の臨床試験の実現になる。そしてHenryは「スケーラブルな真のペーパーレス化が難しい部分だ」とも指摘する。しかし、この課題を解決できれば、業界の改善と大きな変化がもたらされる。そのための3つの取り組みが、医療機関中心となるソリューションの所有に、紙ではない電子的なソースの作成、そして患者中心で集中型のバーチャルビジットへのフォーカスになる。

これらの目標を実現するために、Veeva Clinical Networkがある。

Veevaは、このClinical Networkにアプリケーションを開発することで、利用者に価値を提供する。そしてHenryは新しい2つのアプリケーションを紹介する。ひとつは、Veeva Vault Clinical SuiteSiteVaultを連携させるVault SiteConnectである。Site Connectにより、試験文書の流れが自動化されて、試験のスタートアップをSiteVaultから直接Veeva Vault eTMFVeeva Vault Study Startupで実行できるようになる。

ふたつめのeConsentは、Steve Harperがデモンストレーションも交えて紹介した。

日本への導入については来年以降に予定しており、日本語のサポートも開始する予定のため、今後1年かけてSiteVaultやMyVeevaについても、日本のニーズに対応していくと話す。

臨床業務の価値に対するビジョン

Day1の後半では、AstraZeneca社のAnders Persson氏による「臨床業務の価値に対するビジョン」と題するAstraZeneca社のビジョン・戦略の概要が講演された。Anders Persson氏は、同社でデジタル・トランスフォーメーションのリーダーを務める。Persson氏は、講演で現在のクリニカルオペレーション変革の進捗と、医薬品開発の変革について説明した。AstraZeneca社では、デジタル化がもたらす機会を最後まで追求しようと決めている。また、Persson氏は個人的に「前例がないと思うことがあったら、是非やってほしい」と考えている。こうした考えのもとに、同社では医薬品開発の道筋やバリューチェーンを変革する方法を真剣に探してきた。そのために、3つの取り組みに注力してきたという。1つ目は働き方の変革であり、2つ目は臨床試験とデジタルヘルスの再定義、3つ目はヘルスケアの再考だった。その変革のパートナーとしてVeevaを選び、世界の今後のあり方についてのビジョンを共有している。Persson氏は「デジタル化を通して、いかに働き方を変革し続けるか」が重要だと訴えた。

Vault Development Cloud 2020イノベーション

Day1最後の講演は、Veeva Systems Inc.のJim ReillyによるVault Development Cloud 2020イノベーション。Jimは、業界が直面している課題について触れたあと、Vault Development Cloudがどのように解決できるのかを語った。R&Dにおいては、変化するコンプライアンスへの対応が必須で、臨床研究機関への依存度が高まるなどパートナーシップを結ぶ相手も増える傾向にあり、個別医療化への取り組みも加速している。こうした課題を解決するために、Vault Development Cloudがエンドツーエンドのビジネスプロセスを単一のプラットフォームで提供する。

Jimは「Development Cloudのお客様は600社を超えています。各業務分野それぞれで、お客様に価値を提供し、新しい分野の1つであるVeeva Vault CDMSでは、クリニカルデータの収集と管理を行うことができ、現在120以上の臨床試験で使われています」と説明する。

講演の後半では、Veeva Vault RIM SuiteVeeva Vault Safetyが紹介された。完全な申請情報管理(RIM)機能をクラウドで提供するVault RIM Suiteにより、エンドツーエンドのRegulatory管理が可能になる。

Jimは「申請分野で私たちが革新を進めているのは、すべての申請情報を1カ所に集約するだけではなく、それ以上のことを目指しています」と話す。
また、Development Cloudの最新アプリケーションとなるVault Safetyは、クラウド上のひとつの場所で症例の取り込みと評価のプロセスを管理し、安全性情報管理に関する報告のすべての内容とPSMFを管理できる。そして、Veeva Vault Safety.AIというAIが各種の機能を結びつけて、コールセンターの報告と文献を取り込み、自然言語処理を行って個々の症例を抽出して処理する。
Jimは「現在、アーリーアダプター企業の成功に注力していますが、日本のサポートも開始します」と発表した。
続いて、Vault Clinical Suiteが紹介され、1つのアプリケーションがエンドツーエンドのプロセス管理を実現する機能が説明された。

Jimは「日本に特化して、Vault Clinical Suiteに”Yuzu”という固有の機能を構築しました。日本国内の臨床試験に必要とされる治験届や、治験審査委員会のプロセス管理と追跡など、日本のGCP標準に準拠した重要な機能を提供します」と解説する。

講演の最後に、統計コンピューティング分野に進出するVeeva Statsも紹介された。

Day2は、2つのトラックに分かれて、Veevaの最新テクノロジーが紹介された。
CDMSトラックでは、Vault CDMSを中心に製品の概要とユーザー事例が講演された。

臨床データ管理を一緒に再開発する Reinvent Clinical Data Management Together

「臨床データ管理を一緒に再開発する」では、Veeva Japan 株式会社の清野が、Vault CDMSの概要を紹介した。清野は、Vault CDMSのユーザー機能やスタディデザインの特長について触れ、Veeva Vault EDCにフォーカスしたロードマップと、日本での展開についてのアップデートを説明した。

革新的なデータマネジメントに向けて

続く「革新的なデータマネジメントに向けて-Veeva CDMSと共に-」では、日本イーライリリー株式会社の横山 恵子氏が、Veeva Vault CDMSの導入事例を紹介した。
講演では、Vault CDMSを採用した理由と背景が説明され、Vault EDCを導入していくためのストラテジーと成功の鍵についても紹介された。また、日本でのEDC導入に向けての準備と顧客からのフィードバックにも触れ、最後に将来的な展望が語られた。

CROパートナーの視点から見たVault EDCについて

ClinChoice株式会社の松井 伸人氏は、「CROパートナーの視点から見たVault EDCについて」と題して、CROパートナーによるVault EDCの特長と機能を紹介した。
松井氏は、Vault EDC導入の背景から、Vault EDC構築の概要について説明し、他のEDCシステムとの比較も含めたVault EDCの評価を語った。

Learnings from our Vault EDC Pilot

CDMSトラックの最後は、「Learnings from our Vault EDC Pilot」と題するVault CDMSのスタディについて、Parexelによる取り組みが紹介された。データマネジメントディレクターのCinda Hensdale氏が登場し、Veeva Vault CDMSを使ったタイムラインの概要が紹介された。Hensdale氏は、パイロットで活用した試験の背景を説明し、チーム構成と連携に成功した要因を分析すると、順調に行ったこと学んだことを整理し、Veevaシステムの特筆すべきハイライトに触れた。

Vault Clinicalトラック

Vault Clinical Suiteを中心としたトラックでは、新機能のロードマップがVeeva Systems Inc.のJim Reillyと、Veeva Japanの阪田によって紹介された。阪田は、Veevaが考える業界の課題について触れたあと、Vault Clinical アプリケーションについての最新情報を紹介し、Vault Clinicalアプリケーションの導入が業界にもたらした進歩について説明した。そして、製品機能の概要について解説したあとに、Vault Clinicalアプリケーションのロードマップとデモンストレーションを紹介した。

続く講演では、アストラゼネカ株式会社の萩原 直樹氏が登場し、Veeva Clinical Clubというユーザー会の活動の紹介と今後の展望を紹介した。

最後の講演では、Veeva Japanの森が、「Relevant Areas of the ICH E6 R2 Guideline Addressed in Vault CTMS」と題して、Veeva Vault CTMSによるICH E6(R2)改訂で追加された「品質管理」の対応について解説した。
森は「2018年にR2が出たあと、製薬会社にとっては、このトピックがスポンサーにおいての責任を明確に示しました。スタディの外注が増える中、スポンサーの役割と責任を明記していなかったことから、きちんと状況を把握しておくための改定には、大きな意味があります」と話す。