個別化するコンテンツニーズにどう対応?いま、製薬会社が取るべきアプローチとは?
医師の情報ニーズの個別化、およびコロナ以降に急速に進んだコミュニケーションチャネルの多様化により、製薬企業において多くのバリエーションのコンテンツを制作する必要に迫られています。しかし、多くの企業では制作側の予算やスタッフ・時間に制約があるため、従来のコンテンツ制作アプローチで対応するのは極めて困難な状況です。その状況を打開するためのアプローチを複数回にわたってご紹介します。
情報提供におけるニーズの個別化
製薬メーカーによる医療従事者への情報提供に関して、2つの観点で個別化のニーズが高まっています。1つ目は、提供する情報内容の個別化です。医療用医薬品市場において、近年希少疾患や細分化されたがんに対する治療薬の割合が高まっています。その結果、医師は様々な治療法を理解するために、画一的な情報ではなくより個別化された教育的な情報を求めるようになってきているといえます。2つ目は、情報の提供方法の個別化です。コロナ以降加速したデジタル化により、個々の医師の置かれた状況や好みに応じて、求められる情報提供チャネルが多様化しました。その結果、提供する情報の内容と方法の個別化の掛け算により、求められるコンテンツの量が飛躍的に増加しています。実際、弊社の調査によるとコロナ前後で全世界において制作されたコンテンツ量は約3倍になり、その後も増加傾向は続いています。(図1)
図1:オムニチャネル、個別化によりコンテンツのニーズが継続的に増大
さらに、2024年4月から施行されている医師の働き方改革により、医師のコミュニケーションニーズに合わせた対応がより求められるようになりました。例えば、インターネットサイトやウェブ講演会を通じた情報収集がより求められることが想定されます。
情報提供の個別化の必要性はますます高まっているといえるでしょう。
製薬企業におけるコンテンツ制作上の課題
では、製薬企業は個別化するニーズに応えるための多様なコンテンツをどのように制作すればよいのでしょうか?従来は「対面の面会で使い込むための抜け漏れのない包括的・統一的なコンテンツを企画し、活用後また次に新たなコンテンツを一から企画する」というアプローチが多くとられていました。しかし、そのアプローチで必要とされるコンテンツのバリエーションの増加に対応するのは現実的ではありません。業界全体としては、コストプレッシャーは年々高まっており、コンテンツ制作のために人員や経費を増やすことは簡単には許容されないでしょう。加えて、多くの企業では、コンテンツ制作に従来から様々な課題があり、現状のプロセスとリソースで増加するコンテンツニーズに対応するには限界があります。
たとえば、コンテンツの作り方がブランド・担当者ごとにばらばらで、すべてエージェンシーと一から手作りしている、新たなコンテンツを現場から求められて似たようなコンテンツを繰り返し制作している、審査フローが非効率でほぼ同じような内容でも全て一からレビューし直す必要がある、など多くの企業で似た課題を抱えています。その結果、制作部門および審査部門の負荷が飛躍的に増加し始めています。もしくは、制作予算・リソースがないという理由で、本来提供すべきコンテンツの制作を諦めている可能性もあります。増大するコンテンツニーズに対応するには、コンテンツ制作のプロセスを効率化するしかないと言えるでしょう。
個別化するニーズに応えるコンテンツ制作アプローチ
現状の制作プロセスの課題を解決し、個別化した顧客のニーズに合致したコンテンツをスピーディーに制作するには、「ニーズに合わせて既存のコンテンツを再編集して効率的に提供する」アプローチにシフトする必要があります。弊社では世界各国で製薬企業のコンテンツ制作・管理プロセスの支援を行っており、以下の「コンテンツエクセレンスへのロードマップ(図2)」に示す4つのステップをクリアしていくことがひとつの解決アプローチになると考えています。その中でキーワードとなるのが、「Digital Asset Management(デジタルアセット管理)」および「モジュラーコンテンツ」です。承認済みのデジタルアセットおよびモジュール(コンテンツブロック)を整理し、それらを組み合わせて再利用することで、一貫性を担保しつつ、共通する部分の制作・レビューを効率化できるとともにコンテンツの個別化が可能になるというアプローチです。ただし、その前提として、まずは現状のコンテンツにおいて企画・制作・審査プロセスが効率化され、コンテンツが効果的に活用されている必要があります。そのベースがないまま、より多くのコンテンツ制作に取り組もうとしてもキャパシティが足りなくなるし、苦労してコンテンツが制作されたとしても現場で使いこなすことはできないでしょう。
図2:コンテンツエクセレンスへのロードマップ
上記のロードマップに沿って課題解決を進めていくうえで、鍵となる以下のトピックについて、今後6回にわたって弊社の考え方・アプローチを紹介していきます。
- コンテンツマッピング
- 制作プロセス改善
- レビュープロセス改善
- コンテンツ活用推進
- デジタルアセット管理(DAM)
- モジュラーコンテンツ
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